退職して4日目の朝、
私はいつも通り家事をして子どもを送り出して洗濯をして記事を書いていた。
気づけば10時半になっていた。
外に出たら、信じられないくらいいい天気だった。
そうだ、バイクで山に行こう。
誰かに許可を取る必要もない。スケジュールを確認する必要もない。思い立った瞬間に動ける。
これが退職した人間の平日だ。
在宅になって気づいた小さなメリット
出発前に洗濯機を回した。
会社員時代は夜中に1回まわして干して終わりだった。でも在宅になると違う。
今日は3回まわした。
洗濯物がどんどん片付いていく。たったそれだけのことなのに、妙に気持ちがよかった。
在宅になって初めて気づいた小さなメリットだ。時間があるから、家のことが丁寧にできる。
退職してよかったと思える瞬間が、意外なところにあった。
平日の山道は、別世界だった
バイクにまたがって高原に向かった。
いつもと何かが違う。しばらく走って気づいた。時間に追われていない。
会社員時代のツーリングは違った。限られた休日に、目的地に向かって夢中で走る。
着いたらすぐに帰る。次のことが頭にある。バイクに乗っているのに、どこか急いでいた。
今日は違った。
ノンビリと走った。流れる景色が妙にゆっくり感じられた。
同じ道なのに、時間の流れ方が変わったみたいだった。
平日の山道には人がいなかった。信号もほとんどない。風の音だけが聞こえた。
頂上で、ボーっと景色を眺めた
頂上に着いた。
休日なら人でいっぱいの場所が、ガラガラだった。
景色を眺めた。何度も見てきた景色だ。でも今日は明確に違って見えた。
時計を見ると12時だった。頂上でお昼を食べた。
ふと思った。今頃、会社では昼休みになっている時間だ。
かつての自分は今この瞬間、会社のデスクで昼食をとっていたはずだ。
12時になったら食べて、13時には現場に戻る。毎日その繰り返しだった。
その同じ時間に、私は山の頂上で空を見ながら昼食をとっている。
同じ12時なのに、景色が違いすぎる。
会社員だった自分なら、この景色をわざわざ平日の昼間に見ようとは思わなかった。
「いつか時間ができたら」と言い続けて、結局来なかったはずだ。
頭の中はクリアだった。仕事のタスクも、締め切りも、上司の顔も浮かばない。
ただ景色だけがある。
景色を眺めることが、これほど贅沢なことだったのか。
そう思った。
バイクは「所有するだけ」の存在だった
正直に言う。会社員時代、バイクはほとんど乗っていなかった。
バイクも買えた。仕事を頑張った見返りに給料をもらって、欲しいものを買えた。
でも買ったはいいものの、乗る時間がなかった。
たまに乗っても、急いで目的地に向かってすぐに帰る。ゆっくり走る余裕なんてなかった。
所有しているのに、使えない。
これが会社員時代の現実だった。
時間を会社に売って、お金でモノを買って、でもそのモノを楽しむ時間がない。
何のために働いているのか、たまにわからなくなった。
今日わかったこと
頂上から帰り道、またノンビリと走りながら考えた。
自由というのは、お金があることではない。時間があることでもない。
**「思い立った瞬間に動ける状態」**のことだと思った。
今日の私がそれだった。
朝起きて、家事をして、洗濯を何度も回して、記事を書いて、いい天気だからバイクで山に行く。
誰の許可もいらない。スケジュール調整もいらない。
18年間、ずっとこれがしたかったのかもしれない。
退職して3日目。まだ不安もある。お金のことも考える。
でも今日だけは、純粋に「辞めてよかった」と思えた。
バイクがようやく、本来の使い方をされた日だった。

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